世界最大級の木造建築・東本願寺

東本願寺は浄土真宗大谷派の本山で、文永9年（1272）、親鸞聖人の末娘である覚信尼（かくしんに）が東山大谷に親鸞聖人の廟堂を造ったことがはじまり。覚信尼の孫である3代目の覚如（かくにょ）上人のときに本願寺と名づけられます。8代目の蓮如上人が教団の規模を拡大しました。急激に影響力が増したことから他の宗派の襲撃にたびたび遭い、各地を転々とすることに。

天正19年（1591）、豊臣秀吉が寺地を寄進したことにより現在の西本願寺がある場所に落ち着きます。しかし、12代目の教如（きょうにょ）上人が徳川家康から現在の場所の寄進を受けたことから、慶長7年（1602）、本願寺は東西に分けられました。西本願寺は、弟の准如（じゅんにょ）上人が継いでいます。通称「お東さん（おひがしさん）」と呼ばれることも。

明治28年（1895）に16年かけて再建された御影堂は、高さ38m、東西58m、南北76m、広さは927畳あり、世界最大級の木造建築です。親鸞聖人の木像を安置しています。平成27年（2015）の末に、13年かけて行われた修復事業が完了しました。

阿弥陀堂も御影堂と同じく、明治28年（1895）に再建されたもの。本尊の阿弥陀如来が安置されています。

2つの堂の再建中、木材の運搬途中に引き綱が切れて事故が相次ぎました。そのため、全国の女性門徒から寄進された毛髪と麻を撚り合わせた頑丈な毛綱（けづな）が作られるようになります。現在、御影堂に展示されているものは、長さ69ｍ、太さ約30cm、重さ約375kgです。その当時は、最も重いもので、１tを超すものもあったのだとか。

東本願寺の東にある飛び地境内地・渉成園（しょうせいえん）は、周りに枳殻（からたち）が植えられていたため、枳殻邸（きこくてい）という別名もあります。寛永18年（1641）、徳川家光から約1万坪の土地が寄進され、石川丈山の作庭による池泉回遊式庭園が造られました。13代目の宣如（せんにょ）上人は、この場所を隠居所として利用します。渉成園内の建物は、江戸時代に２度火事にあったため、明治時代に再建されたものです。

渉成園には四季折々に花が咲き、園内の変化に富んだ景色は、中国における「西湖十景」のように「渉成園十三景」と命名されています。かつて源融（みなもとのとおる）が住んでいた六条河原院の跡地という説もありましたが、現在は否定されているようです。たびたび火事にあったため、防災用に琵琶湖疎水から引いた水を、渉成園や東本願寺の外堀で使用しています。

なお、渉成園では平成26年度（2014）から約10年間、保存修理が行われています。平成30年（2018）1月中旬からは、印月池の中の土砂を取り除くため、水位を下げて工事中。期間中には他に、各建物や傾いた捨て石、印月池の護岸の修理、樹木の整理や植栽の復旧などが行われる予定です。