市比賣神社のひいな祭～人間がひな人形に扮する「ひと雛」～

女性の厄除けにご利益がある市比賣神社。歴代の皇后が祈願した場所で、京都中央市場の守り神としても知られています。

「ひいな」とは、平安時代に貴族が遊んだ人形のことです。
もともとは、人形（ひとがた）の紙に厄やけがれを移して川に流す風習があり、そこから「ひいな」が生まれました。
ひいな祭の日には、市比賣神社の本殿に「天児(あまがつ)」と呼ばれる雛人形のもとになった人形が飾られ、参拝者は厄除けをお祈りすることができます。

市比賣神社近くの「ひと・まち交流館」では、人間がひな人形に扮する「ひと雛」を見ることのできるイベントが開催されます。
まずは、参加者が平安時代の貴族の遊びである投扇興・貝合わせ・双六を体験。
投扇興は、的に向かって扇を投げ、的の落ち方と扇の形によって得点を競う遊びです。現在ではお座敷遊びの一種としても知られています。
貝合わせは、裏返しになった貝の中から、同じ柄の貝を選ぶ遊びです。

参加者には、ひな茶とひちぎり（引千切）もふるまわれます。
ひちぎりとは、あこや貝をかたどった上生菓子のこと。生地をひきちぎって作るため、この名前がつきました。
子宝に恵まれることを願って食べられたお菓子です。
もともとは宮中で食べられていたお菓子で、江戸時代以降に一般の人々に広まりました。
京都のひな祭では欠かすことのできないお菓子です。

貴族の遊びを体験した後は、一般から選ばれた男びなと女びなの着付け実演を見てみましょう。
男びな（男性）は衣冠束帯、女びな（女性）は十二単（ひとえ）に着替えます。十二単は重さ約20kgあるそう。
男びなと女びなの着付けが終わったら、緋毛氈（ひもうせん）の敷かれたひな壇に男びな、女びなが移動。
京都（関西地方）では男びなが向かって右側、女びなが向かって左側に座ります。
これは、京都御所紫宸殿（ししんでん）での天皇皇后の座席の位置から決まったそうです。
男びなと女びなの下の段には三人官女、その下の段には五人囃子が着席。
ひな壇が完成した後は、五人囃子による雅楽演奏や三人官女による官女の舞が執り行われます。
天児ノ儀（あまがつのぎ）と呼ばれる、「天児」に息を吹きかけ厄を払う儀式が行われ、祭りは終了します。

祭りの後、希望者は、ひな壇で狩衣と小袿（こうちぎ）の姿で記念撮影をすることもできますよ。